ダイビングの「酸素ボンベ」とは?
ダイビングの器材と聞くと、「酸素ボンベ」をイメージする方も多いかもしれません。しかし、実はダイビングで使われているのは、いわゆる酸素ボンベではなく「タンク」であり、中身も純粋な酸素ではありません。
ここでは、ダイビングで使われるタンクの中身や特徴について詳しく見ていきましょう。
「酸素ボンベ」=ダイビング用タンクではない!?
ダイビングで使用するタンクは一般的に「酸素ボンベ」と呼ばれることが多く、多くの人がそう思い込んでいますが、実際には高圧に圧縮された空気が入っています。この誤解は、ダイビングタンクが医療用の酸素ボンベと見た目が似ていることや、ダイビングが水中での呼吸を伴うアクティビティであり、酸素のイメージが強いことから生まれます。
しかし実際のダイビングでは、純粋な酸素ではなく、私たちが普段呼吸している空気と同じ成分の空気を高圧で圧縮したものを使用します。
ダイビング用タンクの中に入っている圧縮空気とは?
前述した通り、ダイビングタンクの中には空気中の気体を人工的に圧縮し、高圧状態にした圧縮空気が入っています。
圧縮空気の 主成分は窒素と酸素で、大気中の空気とほぼ同じ組成です。ダイビングでは、水深が深くなるにつれて水圧が上昇するため、それに耐えられるように空気を高圧に圧縮しています。タンク内の圧縮空気を呼吸することで、水中の高い圧力に対抗し、安全に呼吸することができるのです。
圧縮空気は、私たちの生活の中で様々な場面で利用されている身近な存在です。ダイビングにおいては、安全に水中を探索するための不可欠な要素となっています。
酸素ではなく 圧縮空気を使う理由とは?
なぜダイビングでは酸素ではなく空気を圧縮して使うのでしょうか?それには主に3つの理由があります。
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安全性: 純粋な酸素での呼吸には、酸素中毒という危険性があります。圧縮空気は酸素の濃度が比較的低いため、酸素中毒のリスクを大幅に減らすことができます。
※酸素中毒とは:高濃度の酸素を長時間吸入することで、身体に様々な悪影響が現れる状態のことです。特に、中枢神経系や肺に障害が起こりやすくなります。 -
自然な呼吸空気は私たちが普段呼吸しているものなので、体に負担をかけずに呼吸することができます。
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経済性空気は比較的安価に入手できるため、経済的なメリットもあります。
このように、圧縮空気は安全性、呼吸のしやすさ、そして経済性の面から、ダイビングに最適な呼吸ガスとして選ばれているのです。
エンリッチドエアーとは酸素濃度が高い良質な空気
エンリッチドエアー(ナイトロックス)とは、通常の空気よりも酸素の割合が多く、窒素の割合が少ない空気を指します。通常の空気は酸素が21%、窒素が約79%で構成されていますが、エンリッチドエアーでは酸素が21%以上含まれています。
ダイビング初心者が特に気を付けなければいけないのは減圧症です。減圧症は、海面に急浮上することによって体内に溶け込んだガス(主に窒素)が急激に気泡化することで発生し、めまいや吐き気、疲労感、呼吸困難といった症状が現れます。
そのためエンリッチドエアーを使うことで、ダイビング中の窒素吸収量が減少し、減圧症のリスクを軽減するなど様々なメリットがあります。
エンリッチドエアーのメリット
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長時間ダイビングが可能
酸素が多く窒素が少ないエンリッチドエアーを使用することで、残留窒素が少なくなり、1日3回のダイビングでも疲れを感じにくくなります。 -
連日でも元気に潜れる
エンリッチドエアーを使用することで、連続した日々のダイビングでも体力が持ち、旅行中も最終日まで元気にダイビングを楽しめます。 -
体力に自信がなくてもOK
年齢や体力の低下を感じる方でも、エンリッチドエアーを使えば、より健康的にダイビングを続けることが可能です。 -
窒素酔いの軽減
エンリッチドエアーにより窒素酔いが軽減され、水中でより頭が冴えた状態を保つことができます。 -
減圧症のリスクが低下
窒素の吸収が少なくなるため、減圧症のリスクが大幅に減ります。